我が家には、背の高い食器棚がありました。賃貸なので壁にネジは打てず、突っ張り棒で天井に固定して——「これで地震が来ても大丈夫」と思っていたんです。
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でも、引っ越し先で食器棚を置く場所の天井を、何気なく叩いてみたとき。”ポンポン”と軽い、空っぽみたいな音がして、ゾッとしました。「この天井、突っ張り棒の力をちゃんと受け止めてくれるの…?」と。
悩んだ末に出した答えは、シンプルでした。固定でがんばるのをやめて、”倒れる高さ”そのものをやめる。背の高い食器棚を手放し、腰より低い70cmのロータイプに買い替えたんです。
結果、収納はほとんど減らず、天板も使えてむしろ便利に。何より「子どもが下敷きにならない」という安心が手に入りました。この記事では、賃貸×共働き×子育ての我が家が、なぜ・どうやって食器棚を低くしたのかを、正直にお話しします。同じように家具の地震対策で迷っている方の参考になればうれしいです。
賃貸だから、背の高い食器棚を突っ張り棒で固定していた
まず、対策をしていなかったわけではありません。むしろ、賃貸でできる範囲のことはやっていたつもりでした。
賃貸は壁や天井にネジを打てないので、転倒防止は突っ張り棒が基本。我が家もそうしていました。さらに、こんな対策もしていました。
- 突っ張り棒で天井に固定する
- 耐震マットを前側に敷いて、本体をほんの少し後ろに傾ける(手前に倒れにくくする)
- 扉は中身が飛び出しにくい「飛び出し防止」機能つきのものを選ぶ
ここまでやって、「背は高いけれど、対策しているから大丈夫」と思っていました。
引っ越し先の天井を叩いたら、”軽い音”がした

不安に変わったのは、引っ越しのときです。食器棚を置こうとした場所の天井を、何気なく叩いてみました。
コンコン、ではなく——ポンポンと軽い音。まるで中が空っぽみたいな”空洞の音”でした。明らかに、その場所は石膏ボードだけで、奥に下地(柱や桟)が入っていなさそうだと感じたんです。
突っ張り棒は、天井と床でしっかり突っ張って初めて効くもの。でも、受ける天井がボードだけだったら……?強い揺れで突っ張り棒がボードを突き破ったり、ずれて外れたりするかもしれない。そう考えると、「固定しているから安心」が、一気に「固定が効かないかもしれない」という不安に変わってしまいました。
賃貸だと、こういう「下地がどこにあるか分からない」問題は、わりとあるあるだと思います。前の家ではたまたま大丈夫だっただけで、引っ越すたびに当たり外れがある。固定に頼る対策は、住む場所が変わると振り出しに戻ってしまう——そう気づいたのも、大きかったです。
※下地のあるなしは、本来は下地センサーで確認したり、心配なら管理会社・大家さんに相談するのが確実です。我が家は叩いた音で判断しましたが、あくまで一つの目安です。
たどり着いた答え=”倒れる高さ”をやめる

突っ張り棒を強化する方法も考えました。でも、最終的にたどり着いたのは、もっと根本的な発想でした。
そもそも、倒れて困る高さの家具を、置かなければいい。
決め手は、子どもの存在です。小1と小3の子どもの身長を考えると、背の高い食器棚が倒れてきたら、まともに下敷きになってしまう。想像しただけで怖くなりました。
それに、家具は低いほど安全になります。
- 背が低ければ、そもそも倒れにくい(重心が低い)
- 高い位置に物がないので、落ちてくる食器も減る
- 落下しても、低い分だけ落下のエネルギー(衝撃)が小さい
突っ張り棒が効くかどうかにビクビクするより、「倒れても大きな被害になりにくい高さ」を選ぶ。固定の有無に頼らないこの考え方が、賃貸の我が家にはいちばんしっくりきました。
もちろん、突っ張り棒や固定が悪いわけではありません。下地のある天井なら、とても有効な対策です。ただ、賃貸で下地が読めない我が家にとっては、「固定が効くことを祈る」より「倒れても被害が小さい」ほうが、心から安心できた——それだけのことです。
腰高70cmのロータイプに変えて、どうだった?
買い替えたのは、高さ70cmほどの、腰より少し低いロータイプの食器棚です。正直、「低くしたら収納が足りなくなるかも」という心配もありました。でも、ふたを開けてみれば——
- 収納量は、思ったほど変わらなかった(横幅や奥行きでカバーできた)
- 天板の上にも物が置けるので、むしろ使い方の幅が広がった
- 圧迫感が消えて、部屋が広く見えるようになった
デメリットらしいデメリットは、ほぼありませんでした。「もっと早く変えればよかった」というのが、正直な感想です。
ロータイプ選びで、気をつけた3つのこと
低い食器棚なら何でもいい、というわけでもありません。買い替えるとき、私が気をつけたのは次の3つです。
- 高さ:立ったまま腰をかがめずに使えるよう、天板が低すぎないものを選ぶ(我が家は約70cmで快適)
- 扉のタイプ:地震で開いて中身が飛び出さないよう、開き戸なら耐震ラッチ付き、または引き戸を選ぶ
- 安定感:脚で浮いているタイプより、床にどっしり接地して重心が低いものを選ぶ
「低い=安全」とはいえ、選び方しだいで、安心感はさらに変わってきます。
食器棚だけじゃない、我が家の地震対策
食器棚をきっかけに、家具全体の置き方も見直しました。とくに意識しているのは、次のようなことです。
- 子ども部屋には、背の高い家具を置かない
- 寝ているとき・過ごす時間が長い場所の近くに、倒れて危ないものを置かない
- 食器や小物には滑り止めシートを敷いて、揺れで飛び出しにくくする
- 高い棚の上に、重いものや割れるものを置かない
あわせて、玄関や部屋の出入口の近くには、倒れて道をふさぐような家具を置かないようにしています。いざというとき、逃げ道を確保しておくためです。
完璧な対策はできなくても、「倒れたら一番危ない場所」から優先して、背の高いものを減らす。それだけでも、安心感はだいぶ違います。(暮らしを整える工夫は共働き子育てをラクにした話にもまとめています。)
ちなみに、家の中の「割れる」対策として、全身鏡も割れないフィルムミラーに替えました。子どもが倒しても割れず安心です。詳しくは全身鏡を割れないフィルムミラーに変えた話をどうぞ。
食器棚の次に整えた、「家具以外」の備え
毎年9月1日の防災の日が近づくと、わが家では家具の対策だけでなく、備蓄や持ち出し袋も一度見直すようにしています。家具を低くしても、水や食べ物がなければ乗り切れませんから。ここからは、わが家が実際にやっている「家具以外」の備えを紹介します(あくまで一例です。必要な量や中身はご家庭やお住まいの自治体の推奨で変わるので、公式の防災情報もあわせてご確認ください)。
水と食料は「3日分」をローリングストックで
- 水:2Lペットボトルを18本ほど(家族で3日分以上を目安に)
- 食料:レトルトや乾燥させた保存食を3日分ほど
ポイントは、賞味期限が近づいたら普段の食事で食べたり飲んだりして、買い足して更新すること。いわゆる「ローリングストック」です。特別なものを買い込むより、普段使いのものを少し多めに回すほうが、わが家には続けやすいやり方でした。なお、国や自治体では最低3日分、できれば1週間分の備蓄が推奨されることが多いので、余裕があれば量は増やしてください。
防災リュックは玄関の近くに
いざというときにすぐ持ち出せるよう、防災リュックは玄関の近くに置いています。中身は、携帯トイレ・ラジオ付きランタン・救急セット・毛布などが入ったセットです。「どこにしまったか思い出せない」では意味がないので、置き場所は家族全員が知っている場所にしています。
「何をそろえればいいのか」で迷ったら、人と防災未来センターが公開している「減災グッズを備えよう!チェックリスト」が参考になります。備えを3つの段階に分けて整理してくれる資料です。
- 0次の備え:いつも持ち歩くもの(ケータイなど)
- 1次の備え:非常持ち出し品(すぐ持って逃げられる1パック)
- 2次の備え:安心ストック(自宅に備えておくもの)
いいのは、チェックした日・次にチェックする日を書き込む欄があること。「1年に2回はチェックする日を決めておく」と書かれていて、備えを”やりっぱなし”にしない仕組みになっています。避難先や連絡先を記入する欄もあり、家族で話すときの土台にちょうどいい内容です。
👉 「減災グッズを備えよう!チェックリスト」(PDFが開きます)
※人と防災未来センター発行の資料です。最新版は公式サイトでご確認ください。
賃貸の収納問題は「クローゼットの隅に箱積み」
水と食料を3日分そろえると、けっこうなボリュームになります。賃貸で収納が限られるわが家は、クローゼットの隅に箱積みで保管しています。見た目はスマートではありませんが、居住スペースを圧迫せず、期限チェックのときにまとめて確認できるので、これで落ち着きました。
共働きで一番こわい「子どもと離れているとき」の取り決め
備蓄以上に、わが家が大事にしているのがこれです。共働きだと、平日の昼間は親が子どものそばにいません。地震が起きたその瞬間、子どもがどこにいるかで動きが変わります。そこで、家族で行動の取り決めをして、ことあるごとに口に出して確認しています。
わが家の場合、避難所が通っている小学校なので、こう決めています。
- 小学校にいるとき:先生の指示を聞いて、そのまま小学校に残る
- 学童にいるとき:学童の先生の指示に従う(最終的には小学校へ避難する前提)
- 小学校から学童へ向かう途中のとき:途中にある中学校に助けを求める
あわせて、子どもには見守りGPS(ミマモルメ)を持たせているので、居場所の把握はその情報にも期待しています。ただしGPSは電波や通信の状況で使えないこともあるので、あくまで「取り決め」が主、GPSは補助という位置づけです。
⚠️ これはあくまでわが家の取り決めです。避難所や避難経路、学校・学童からの引き渡しルールは地域や施設によって違います。必ずお住まいの自治体のハザードマップと、通っている学校・学童の避難方針を確認したうえで、ご家庭に合った取り決めをしてください。そして何より、決めたことを家族で繰り返し口に出しておくことが、いざというときに効きます。
大きな地震のニュースがあった日に、家族で見直したこと
大きな地震が起きたというニュースが流れた日、わが家では改めて避難先と備えの確認をしました。テレビの映像を見て、子どもたちが不安そうな顔をしていたのがきっかけです。
ここでは、その日にわが家が実際にやったことを記録として残しておきます。特別なことはしていませんが、「いつか」ではなく「その日」に動いたことに意味があると思うので。
①集合場所をもう一度、口に出して確認した
前に決めた取り決め(学校にいるとき・学童のとき・移動の途中のとき、それぞれどうするか)を、あらためて家族で口に出して確認しました。
うれしい発見がありました。子どもたちが、集合場所をちゃんと覚えていたのです。ことあるごとに繰り返してきたことが、少しずつ身についているのだと分かりました。紙に書いて貼るより、口に出す回数を増やすほうが効く——これがわが家の実感です。
②「薬」の携行が抜けていたことに気づいた
備えの見直しで、はっきりした抜けが見つかりました。常用している薬の持ち出しです。
防災リュックの中身は、水・食料・携帯トイレ・ランタン・救急セットなど「もの」で考えがちですが、ふだん飲んでいる薬は、その家庭にしか分からない必需品です。市販の救急セットには当然入っていません。わが家はこの日、あらためて薬を携行できるように準備しました。
- 常用している薬がある家庭は、数日分を持ち出せる形にしておく
- 薬の名前や飲み方をメモしておく(本人以外でも分かるように)
- お薬手帳の情報を、写真で残しておくのも手
- 定期的に中身を入れ替える(使用期限があるため)
※薬の保管方法や持ち出しについては、かかりつけの医療機関や薬剤師に相談するのが確実です。
③子どもが不安がったときこそ、「決めてある」が効く
ニュースの映像は、子どもにとってこわいものです。だからこそ、「もしものときはこうする」と決めてあること自体が、安心材料になると感じました。
「わからない」がいちばん不安なので、行動が決まっていれば、その分だけ不安は小さくなる。防災の準備は、ものをそろえることだけではないのだと、あらためて思いました。
④「この家は大丈夫か」を、感覚でなく地図で確かめる
家族で話していて出たのが「そもそも、この家のあたりは大丈夫なのか」という疑問でした。なんとなく「たぶん平気だろう」と思っていましたが、それこそ確かめていない状態です。
まず見るべきはハザードマップです。神戸市の場合、洪水・土砂災害・津波・高潮などをまとめた「くらしの防災ガイド」(各区版)が、毎年6月ごろに各戸へ配布されています。……正直に書くと、わが家は届いていたはずのそれを、きちんと見ていませんでした。
- 👉 神戸市ハザードマップ(くらしの防災ガイド)|自宅・学校・職場の3か所を見ておくと安心です
- 👉 活断層について(兵庫県)|活断層の位置や発生確率などを調べられる資料への案内です
ハザードマップは「危ないかどうか」を知るためだけのものではありません。どこへ逃げるか、どのルートで行くかを決める材料になります。子どもと一緒に見て、「うちはここが避難所だね」と地図の上で確認しておくと、前に書いた”集合場所の取り決め”がぐっと具体的になります。
※内容は更新されることがあります。最新の情報は、お住まいの自治体の公式サイトでご確認ください。
改めて感じたこと
わが家が住んでいる場所も、いつ地震が起きるか分かりません。「いつか来る」ではなく「いつ来てもおかしくない」という前提で、日ごろから備えておく必要がある——ニュースを見ながら、家族でそう話しました。
備えは一度やって終わりではなく、ときどき見直すもの。今回のように「薬が抜けていた」という気づきは、見直さなければ分からないままでした。年に何度か、家族で確認する日を作るのがいいのだと思います。
神戸で学んだ”正しく恐れる”
私が住んでいるのは神戸。阪神・淡路大震災を経験した街です。住んでいると、自然と防災を意識する機会が増えました。
そのなかで大事にしているのが、「正しく恐れる」という考え方。むやみに怖がって何もしないのでも、根拠なく「うちは大丈夫」と油断するのでもなく、きちんと知識をつけて、できる対策をしておく。食器棚を低くしたのも、その一つです。
南海トラフ地震の話も、よく耳にするようになりました。いつ来るか分からないからこそ、日々の暮らしの選択に、少しだけ”地震”の視点を足しておく。それが、家族を守ることにつながると思っています。
(※防災対策に「これで絶対安全」はありません。お住まいの自治体の防災情報や、専門家の情報もあわせて確認してください。)
地震以外の備えとして、雷が鳴ったときの正しい避け方もまとめました。「音が聞こえたら、もう危ない範囲」——子どもに伝えておきたい話です。
備えを見直すきっかけとして、人と防災未来センターに子どもと行った記録も書きました。建物の外に掲げられた「想定される津波の高さ30m超」の垂れ幕は、入館しなくても見られます。
まとめ:家具は”地震も意識して”選ぶ

賃貸で背の高い食器棚を突っ張り棒で固定していた我が家が、天井の”軽い音”をきっかけに、腰高70cmのロータイプに変えた話でした。ポイントをまとめます。
- 賃貸は固定が難しい→「倒れる高さ」をやめるのが根本的な安心
- 低い家具は、倒れにくく・落下物も衝撃も小さい
- ロータイプでも収納はほぼ変わらず、天板も使えて便利
- 危ない場所(子ども部屋・寝室・出入口)から優先して、高い家具を減らす
家具を選ぶとき、デザインや収納力だけでなく、ほんの少し”地震”も意識してみる。大きな買い物だからこそ、その視点が、いつか家族を守ってくれるかもしれません。賃貸暮らしの方は、持ち家か賃貸かの記事もあわせてどうぞ。



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